建築史課題1提出2015/07/23 14:12

 建築史の課題1を提出した。レポートのタイトルは『ギリシア建築とローマ建築の「オーダー」の違い』。ギリシアとローマはいわゆる古典主義建築で、オーダーというシステムを用いたものだ。柱を多用している点で外見的に近い部分はあるが、その精神は大きく異なる。

以下、レポート抜粋

 「オーダー」とは、円柱と梁など上部架構の細部に関する体系で、古典主義建築の造形を根本的に規定する重要な要素である。古代ギリシアで創り出され、その後のローマでも多用されているが、両者の趣はやや異なる。そこで、ギリシアとローマのオーダーはどのような意味を持つのかを考察する。

 ギリシア建築は、ヨーロッパの基本的な建築様式のひとつとなっている。その特徴は、円柱と梁からなる架構式とオーダーを基本にしている点にある。古典主義建築に共通する基本的な美の概念は「調和」であり、建築も自然の法則に従い、構成要素は独自の形態と役割を保ちながら、調和のとれた全体を構成しなければならないと考えられた。ギリシア的調和の現れが「比例」で、それによって表現される「均衡と安定」がギリシア的な調和である。柱身の基底部の直径を1単位と定め、その倍数を用いて柱の高さや列柱間の寸法などを決めるオーダーを完成させたのである。ドリス式、イオニア式、コリント式の3つの形式が定められたが、これによって、円柱の形式と柱径などを定めれば、自動的に神殿全体の形ができるほどであった。 
 しかし、オーダーを用いる架構式は、本来石造建築には向かない。それにもかかわらずギリシア神殿が架構式なのは、もともと木造であったからで、崇高な外観を与えるための芸術的手段であったと考えられ、それをひとつの芸術的形式にまで高めたものが、ギリシアにおけるオーダーなのである。

 古代ローマ帝国は、帝国統治の拠点とするために領内各地に都市を建設し、道路網や上水道など国家基盤の整備を進め、都市にはさまざまな構造物が造られた。ギリシア建築では厳密な加工が必要であったが、ローマでは多くの建築事業を進める必要性から、石材をモルタル接合しながら積み上げる、実用的で経済的な方法が採用された。
 二次元的な構造のアーチを立体的に拡張した曲面構造がヴォールトであり、半球状のものをドームと呼ぶが、ローマ人はこれらを公共建築や宮殿の天井を覆うために用い、ギリシア建築にない広大な内部空間を創造したのである。
 しかし、ギリシアのオーダーが完璧であったため、ローマにおいてもこれを欠くものは建築と呼べないほどであった。そこでオーダーを構造物の装飾として取り入れることを考えついた。のである。ローマ人は、エトルリア起源の簡素なトスカナ式と、イオニア式とコリント式を複合した豪華なコンポジット式の2つのオーダーを加え、旧来の3形式にはアレンジを施して、オーダーを適用したさまざまな建築展開していくのである。

建築史1資料

 以上、ギリシア建築とローマ建築のオーダーについて考察してきた。「ギリシア建築では、精神的な造形表現の手段として、一方ローマ建築では、物質的な造形表現の手段としてオーダーが用いられたといえるのである。

オーダーの資料があまりなくて困りったが、西洋建築の歴史/美と空間の系譜(佐藤達生著 河出書房新社2005)と教科書を中心にまとめた。建築史は実質的に西洋建築史なので、西洋美術と絡みがありなかなか面白い科目です。