工芸Ⅰスク初日 ― 2015/05/15 22:37
ひさひぶりのスクーリング。工芸Ⅰである。6時55分発の新幹線で出発。終点東京で乗り換えて、8時30分に新宿サテライトに到着した。
机の上にレジュメが置かれている。本日の予定は、午前中が講義、昼食の後、各自で駒沢の「日本民藝館」に移動、14時から見学。次に青山に移動して「伝統工芸青山スクエア」を見学、その後、現地解散の予定だ。
講師は小林良一先生。講義内容は、現在の日本における工芸の意味について。「工業製品は、少品種の大量生産から多品種小ロットに変わり、消費者のニーズに応えるため、さらに細分化される。工業製品の究極として「個々の好みに対応していく製品になるだろう。それは手仕事である工芸が持っていた役割と同じである」という話。もう一つは「工芸を地域風土に根ざした生活用品として捉え、いわゆる伝統工芸が、生活価値観やライフスタイルの多様化で、衰退を余儀無くされている。国・経済産業省の施策として取り組んでいるが、なかなか上手くいっていない」といういう話。それと「日本人の美意識について」がちょこっと。これらの講義と見学から、工芸の現代的意味と、工芸がわれわれの暮らしの豊かさのさに果たすべき役割を探すのが、工芸Ⅰの大きなテーマとなる。
昼食を銀蔵の寿司ランンチで済ませて、小田急線で日本工藝館に向かう。最寄駅は新宿から8分の東北沢。炎天下を歩いて15分、集合時間より20分以上早く到着した。日本民藝館は柳宗理が創設した伝統工芸品を収蔵する美術館だ。現在の5代目館長はプロダクトデザイナーの深澤直人。民藝という思想的なものがベースだから、展示品は一般的な工芸品から見ればかなり異質。「これが工芸なのだろうか、展示する価値があるのだろうか」展示品を見た時の偽らざる感想である。特に驚きもない、ごく普通の古びた生活用品、歪んでいたり、割れていたり、不揃いだったり、工芸品としての完成度は語るべくもない。しかし、すべてにいえることは、市井の人々が使っていたであろう道具としての力強さであり、素朴で、おおらかで、暖かく、心を和ませる何かがあるということである。それを美として捉えるか否かは別として、それなりのインパクトがありました。

▲日本民藝館/外観

▲日本民藝館/内部
次は伝統工芸青山スクエア。日本各地の伝統工芸品を展示販売している。ざっと見た第一印象は、さまざまな伝統技術を駆使した工芸品ばかりであるにもかかわらず「欲しいものがない」ということ。もう一つは、伝統工芸をなんとか現代のライフスタイルに合わせようと葛藤する痛々しい姿である。漆塗りのワイングラス、蒔絵や螺鈿のブローチ、秋田杉樽のビアジョッキ、キャラクター化された包丁、などなど…消費者に迎合したかのような歪な工芸品が姿である。ものとしての機能が満たされ、それが伝統技術によるものでも、デザインに魅力のないものに市場性があるとは思えない。
ということで現地解散。なかなか面白い1日だった。
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