9ヶ月ぶりの建築史2016/06/04 17:03

 なかなかまとまらなかった建築史の課題3を提出した。なんと9カ月ぶり。設定した問いは「古典主義建築としてのルネサンスとバロックの決定的な違いとは何か?」。自分で問いを設置するのはなかなか難しいが、ここは王道の「ルネサンス建築とバロック建築」の比較を問いとした。

以下、レポート抜粋。
 ルネサンス建築は、古典の理念を規範として新しい様式を創造した。古典の規範を破ることによって新しい表現を求めたのがロック建築である。ここでは、ルネサンス発祥の地であるイタリアでのルネサンス建築とバロック建築の相違点を考察する。

 ルネサンは、古代文化の復興運動として15世紀初頭のイタリアに生まれた。それまでの中世ヨーロッパでの芸術や文化は神を礼賛するものだった。しかしルネサンスが理想とした古代の芸術・文化は人文主義であり「人間の価値の再発見」であった。建築においても古代を理想として、さまざまな建物が造られた。この時代、建築の本質は哲学と数学にあるとされ、安定した調和のとれた意匠がよしとされたのである。(作例)サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂。捨子養育院。パラッツォ・ルチェルラーイ。 

 一方、バロック建築は、16世紀末にイタリアで発生し、その誕生の原動力は抵抗宗教改革にあった。ルネサンスは、教会の腐敗に目を向けさせ、宗教改革を引き起こした。これに脅威を感じたカトリック教会側は、抵抗宗教改革を強力に展開、信仰を目に見える形で表現し民衆の心をつかもうとした。その舞台ともいえるバロック建築は、空間の連続性あるいは流動性の強調や、オーダーなどの大胆な適用によって力強い動的な表現を創りだした。(作例)サン・ピエトロ大聖堂とコロネード。サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂。

 以上、二つの様式は大きく異なっているかのように見えるが、バロック建築は、ルネサンスの技術が発展したものであり、古典主義建築としてみれば同じ文脈にあるが、ルネサンス期に、神のための建築から、人のための建築へとシフトした様式が、やがて、絶対的権力のためのものに変質していった。つまり、ルネサンス建築とバロック建築を分かつものは、「人間」か「神」かという、思想的背景の違いである。

建築史3

 論旨は以上のようなもの。技術的な部分で比べてもキリがないので、その思想的な背景にしたが、「人間」か「神」かという、思想的背景は、作る立場にある建築家にはあまり関係ないようにも思える。いずれもお金を出してくれるパトロンの移行に対して、ベストを尽くすだけなのだから。つまり、パトロンが変わっただけといえばそれまで。僕はそこにポイントを持ってきたが、いかなる評価になるだろうか…