建築史課題3が戻ってきた2016/06/13 20:34

6月6日に提出した建築史の課題3が戻ってきた。評価は「B」。やはり消化不良だった部分が指摘されている。もう少し推敲を重ねたほうがよかったが、9月までの卒業基準108単にを満たすために、焦り気味ではある。

講評はA立先生

・ヨーロッパの建築に二つの潮流があるとすると、ひとつはゴシック系、もう一つは古典主義系です。その「古典主義建築らしさ」を軸として両者を比較しようとするレポートです。

・「古典主義建築らしさ」は人によって思い浮かべる内容が異なっていきそうです。序論と本論の間に筆者が考える「古典主義建築性」を明確に定義するといいですね。そのあとで、その基準がルネサンス建築とバロック建築でどう違うのか、論点順にみていくといいでしょう。

・比較したいのはどの点でしょうか。ファサードですか。それとも造形理念ですか。 ルネサンス期の作例が聖堂、捨て子養育院、パラッツォで、バロック期の例が二つの聖堂でした。同じビルディングタイプ同士を比べないと厳密な比較にならないので注意してください。建築タイプをまずそろえて、もし聖堂なら聖堂のファサード同士、平面同士など、要素を比べていきます。比較する要素以外の条件をそろえるのが比較の基本です。

・結論にあたる最終段落で、単純なものから装飾的なものへの移行があったと指摘されています。バロック期のサン・カルロ~聖堂ではうねりがあるファサードと言っているので、ルネサンス期の○○聖堂のファサードは平面的、と書いておくと比較になります。

・最後にルネサンスとバロックの建築の違いは「人間のためか」「神のためか」の思想的背景にある、と指摘されています。これこそこのレポートの真の問い(仮説)ですね。これを論証できるように本論を構成しなおすとよいでしょう。つまり、どの造形に、「人間のため」あるいは「神のため」という造形理念が現れている、と比較していく構成です。比較は相違点を指摘することが目的ではなく、なぜ違うかを考えるところまでが1セットです。 材料はそろっているので比較の順序を整理し、マスターしてしまいましょう。他の科目や社会に出てからも比較を行う事は多いです。

・造形理念を考察するには建築家の言葉や理論書があるといいですね。専門書には部分的ですが引用されていますし、アルベルティ『建築論』など日本語で読める本もあります。

・問いと結論がねじれている(問いをキャッチしていない)ように読めました。書き終わったら見直して、結論に合わせ問いを修正するなど推敲をおわすれなく。

 「材料はそろっているので比較の順序を整理し、マスターしてしまいましょう。」という言葉は、材料があるのにまとめきれていないということだ。もっとレポートを客観視することだろう。次は最終課題、がんばろう!

9ヶ月ぶりの建築史2016/06/04 17:03

 なかなかまとまらなかった建築史の課題3を提出した。なんと9カ月ぶり。設定した問いは「古典主義建築としてのルネサンスとバロックの決定的な違いとは何か?」。自分で問いを設置するのはなかなか難しいが、ここは王道の「ルネサンス建築とバロック建築」の比較を問いとした。

以下、レポート抜粋。
 ルネサンス建築は、古典の理念を規範として新しい様式を創造した。古典の規範を破ることによって新しい表現を求めたのがロック建築である。ここでは、ルネサンス発祥の地であるイタリアでのルネサンス建築とバロック建築の相違点を考察する。

 ルネサンは、古代文化の復興運動として15世紀初頭のイタリアに生まれた。それまでの中世ヨーロッパでの芸術や文化は神を礼賛するものだった。しかしルネサンスが理想とした古代の芸術・文化は人文主義であり「人間の価値の再発見」であった。建築においても古代を理想として、さまざまな建物が造られた。この時代、建築の本質は哲学と数学にあるとされ、安定した調和のとれた意匠がよしとされたのである。(作例)サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂。捨子養育院。パラッツォ・ルチェルラーイ。 

 一方、バロック建築は、16世紀末にイタリアで発生し、その誕生の原動力は抵抗宗教改革にあった。ルネサンスは、教会の腐敗に目を向けさせ、宗教改革を引き起こした。これに脅威を感じたカトリック教会側は、抵抗宗教改革を強力に展開、信仰を目に見える形で表現し民衆の心をつかもうとした。その舞台ともいえるバロック建築は、空間の連続性あるいは流動性の強調や、オーダーなどの大胆な適用によって力強い動的な表現を創りだした。(作例)サン・ピエトロ大聖堂とコロネード。サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂。

 以上、二つの様式は大きく異なっているかのように見えるが、バロック建築は、ルネサンスの技術が発展したものであり、古典主義建築としてみれば同じ文脈にあるが、ルネサンス期に、神のための建築から、人のための建築へとシフトした様式が、やがて、絶対的権力のためのものに変質していった。つまり、ルネサンス建築とバロック建築を分かつものは、「人間」か「神」かという、思想的背景の違いである。

建築史3

 論旨は以上のようなもの。技術的な部分で比べてもキリがないので、その思想的な背景にしたが、「人間」か「神」かという、思想的背景は、作る立場にある建築家にはあまり関係ないようにも思える。いずれもお金を出してくれるパトロンの移行に対して、ベストを尽くすだけなのだから。つまり、パトロンが変わっただけといえばそれまで。僕はそこにポイントを持ってきたが、いかなる評価になるだろうか…

建築史課題2の評価2015/09/29 20:30

 前回に引き続き早い!1週間で建築史の課題2の評価が出た。前回はBだったが、出どころが不明確な資料は使わないようにとの指摘を受けて、結構シビアに資料を読んでまとめたこともあって、今回は「A」評価でした。しかし、相変わらず、レポートの書き方の指摘が多かった。

 以下、講評。第1課題に引き続き、AJ先生。

ゴシック建築は人気のあるテーマです。タイトル欄にはタイトルと問いの両方を書くようにして下さい。タイトルには、そのレポートで掘り下げる建築作品や時代などのキーワードを盛り込むようにします。疑問文のタイトルもOKですが、学術的ではないので体言止めになるよう工夫しましょう。

・第一段落の一文目、「ゴシック建築は大聖堂を主役とした建築様式」とありますが、実際は住居や視聴者など宗教施設以外もありました。現在まで残っていないだけであることを忘れないようにしましょう。代表的な住居に、ヴェネツィアの運河沿いの邸宅などがあります。

・第三段落冒頭分「~ステンドグラス。」と体言止めになっていますが、学術文章では、「主語+述語からなる完全文」を書くようにしてください。

・段落の構成が上手くできています。

・美しい図版ですが、図版には番号を振り、該当箇所直後の句読点の前に(図1)などを挿入し、文章と図版を関連付けるようにしましょう。本文で言及しない図版の添付は不要です。また、図版には典拠(どの文献から採ったのか)も記載してください。

・参考文献の単行本タイトルは『』二重カギカッコでくくりましょう。

・文章量の関係でカットされたのかもしれませんが、ステンドグラスで鮮やかな色彩が使えるようになったのもシュジェの功績です。厳格なロマネスク期の修道会シトー会の聖ベルナールは色彩を認めず、シュジェの論争相手でした。参考:徳井淑子『色で読む中世ヨーロッパ』講談社、2006年。」

 いきなりタイトルの書き方の指摘があるとは思わなかったが、確かに「タイトル欄にはタイトルと問いの両方を書くよう」指示がある。今後気をつけますデス。「学術文章では体言止めは回避して主語+述語からなる完全文を書くように」とうい指摘も、気をつけているつもりなんだけど、つい使っちゃった感じ、頑張ります。。体言止めの文章、割と好きだけど、回避しなければならないということですね。
 細かい部分の指摘はないけれど「A」評価ということは概ね良しといいうことなんでしょう。西洋美術史1的な講評ならもっと嬉しいのですが…
 シトー会の聖ベルナールとシュジェの論争は興味ありです。時間があったら読んでみよう。ということで、次に進みます。

建築史課題2提出2015/09/21 17:19

 課題2は、中世の建築史から問いを考えてレポートをまとめる。ロマネスクも造形としてはなかなか魅力的なのだが、絞りきれない芒洋さもあるので、今回はゴシック建築にした。ゴシックは国際様式なので、基本となる構造的要素がある。それは、「尖頭アーチ」、「フライング・バットレス」、「交差リヴ・ヴォールト」。しかし、これらはすべてロマネスク末期に登場していた造形。ではゴシック建築を規定するもで、ゴシックが発明したものは何かを考察した。タイトルは「ゴシック建築の革新とはなにか?」。

以下、レポート抜粋。
 「12世紀中頃にイール・ド・フランス地方を中心に始まったゴシック建築。最初のゴシック建築は、サン・ドニ大聖堂の内陣で、この建築を指揮した修道院長シュジェは、光あふれる空間の創造を目指した。ゴシック建築の視覚的イメージを決定づける、尖頭アーチ、フライング・バットレス、交差リヴ・ヴォールトの3つの要素はすべてロマネスク末期に登場していた。では、ゴシック建築の革新的な造形とは何か。

 尖頭アーチは、半円形アーチに比べ水平推力が小さくなる。そのため、開口部を広く高くすることが可能になり、荷重を柱で支持する構造を実現した。尖頭アーチの視覚的効果は、高さを求めるゴシックの重要な要素である。しかし、この尖頭アーチはゴシック独自の表現ではない。ゴシック建築を印象づける尖頭アーチは、ロマネスク建築の成果なのである。

 大きなステンド・グラス。これを可能にしたのがフライング・バットレス(飛梁)で、身廊の天井ヴォールトのリヴに集まる推力を最外部の控え壁へと伝達することで、壁厚が薄く開口部が広い構造を実現した。ゴシック大聖堂外観の大きな特徴であり、決定的ともいえる構造的要素であった。しかし、サン・ドニ大聖堂は、フライング・バットレスは設けられていない。ロマネスク建築で使われている例もあり、多くのゴシック建築を特徴づける構造的要素ではあるが、ゴシック独自のものはない。

 交差リヴ・ヴォールトは、交差ヴォールトの対角線の稜線に突出したリヴを設けて、これを化粧、強調したもの。ヴォールトの水平推力がベイの四隅に集中する力の流れを視覚的に表現している。外見上、アーチとリヴが骨組みを形成し、骨組みの間にある天井パネルは、この骨組みで支持されているように見えるが、構造的な合理性は低く、視覚的効果の意味合いのほうが強い。この交差リヴ・ヴォールトもロマネスク建築の成果であり、イングランドのダラム大聖堂は、交差リヴ・ヴォールトを全面的に使用した大型教会堂の中で最古のものとされる。

 以上、ゴシック建築の視覚的イメージを決定づける3つの要素を見てきた。ロマネスクの壁の建築に対して、ゴシックは骨組みの建築といえるが、より多くの光を求めてゴシックが目指したのは、面的な要素をなくし、線のみでできた鳥かごのような視覚的イメージ。ゴシック建築の革新的な造形とは、ロマネスク建築がすでに達成していた、尖頭アーチ、フライング・バットレス、交差リヴ・ヴォールトを巧みに用いて創り出した「光あふれる骨組みの空間」である。

建築史2 資料

 かなり抜粋していますが、論旨は以上のようなもの。最後まで苦労したのが、フライング・バットレスの検証。資料には「ロマネスク建築の成果」とあるものの具体例はない。ウィキには「ロマネスク建築の側廊屋根裏のアートを外に出して身廊の壁を支えた」的な記述があるが、ウィキを資料とするのはNGである。それで、ロマネスク建築の写真を片っ端からチェック、フライング・バットレスがある教会堂を確認した。後から補修されている可能性もあるが、ロマネスク建築にはかわりない。

建築史の課題2は…2015/08/21 16:21

 教科書の第2章「中世」を読み、ロマネスク建築、ゴシック建築のいずれかについて、自分で「問い」を設定してそれに答えるような形でレポートを制作するというもの。課題1もそうだったが、この「問い」を設定してというのが厄介だ。「ロマネスクの建築の造形的特色について述べなさい」とか、ゴシック建築を成立させている要素について書くなさい」、「中世の都市について論じなさい」などが教科書の演習問題としてあげられているが、まんま問いにしちゃって良いのか、よくわからないのだ。

建築史2資料

 課題1では『ギリシア建築とローマ建築の「オーダー」の違い』を問いとしたが、課題2は「ロマネスク建築、ゴシック建築のいずれかについて」とあるから、ロマネスクとゴシックの建築様式の比較的なレポートはどうなのだろうか。今ひとつこれでいこうという方針が出ないまま、とりあえず中世ヨーロッパのキリスト教会建築の歴史を読み漁っている。

 西洋美術史と重なる部分があって面白い。キリスト教との関わりが全てにつながっているから絵にしろ建物にしろ、背景のストーリーは興味深いのだ。やっぱり「ゴシック建築の造形的特徴とはなにか」的な問いにしようかな。ロマネスク建築のアーチ構造なんかも面白いテーマだけど…
 写真に写っている「ゴシックとは何か(著者:酒井健」」は西洋美術史の時に買った本だけど、これはキリスト教とゴシック建築の精神的関わりについて書いてあって面白いです!興味があったらぜひ!